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なぜ競馬は魅力的なのか?カイヨワの遊戯理論を用いて競馬の魅力を解析

ロジェ・カイヨワの遊戯論


競馬の魅力といっても、人それぞれだと思います。

たとえば、単純にレースだけを楽しむ人。
また、馬券を購入して、一獲千金を狙うギャンブルとして楽しむ人。
そして、競走馬を所有したり、お気に入りの騎手などを応援する人など、どれも競馬の魅力といっても間違いありません。

そして、これらを大きく一括りにすると『遊び』に当てはまると考えられます。

では、なぜ人間は遊ぶのでしょうか。

競馬と遊びについてのイメージ画像1

現代フランスの代表的知識人といわれる社会学者のロジェ・カイヨワは、なぜ人は遊ぶのかとの疑問に対し、神話や文化人類学、歴史学など様々な観点から解き明かしていく『遊びと人間』という内容の書籍を1958年に発表しました。
これは基点に文化の発達を考察し、遊びの純粋な像を描き出した遊戯論の名著で今でも多くの方に読まれています。

その中でカイヨワは人間の遊びを競争・偶然・模擬・眩暈の4種類に分類して分かりやすく説明しました。

しかし、この4つがすべて兼ね備わった遊びは、そう多くはありません。
ただ、この4つがすべて揃った遊びこそ、万人受けする遊びではないかと考察してみました。

そこで今回は、カイヨワが表した4つの遊戯論を基にして、競馬は4つの条件すべてを満たしているのかを紹介していきます。

なぜ、競馬はギャンブルの中でも飛び抜けて人気があるのか。
その答えは、この4つの遊びを結び付ければ、競馬の魅力としても理解していただけると思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

4つに分類される遊びの要素


まず、この4つの要素について、簡単に説明します。

1つ目、『競争』というのは勝利という価値を得るために相手と競い合うことです。たとえば、取っ組み合いや腕相撲、サッカーや野球などの球技、チェスや将棋などがこれに分類されます。

2つ目の『偶然』は、自分の努力や練習とは無関係の偶然に身を委ねる遊びです。まさに運を委ねる遊びですね。
これは、じゃんけんやおみくじ、ルーレットやギャンブル全般などが挙げられます。

3つ目の『模擬』は、何かを演じて遊ぶことをいい、ままごとやお人形さんごっこ、ものまねや仮装演劇などもこれにあたります。

最後の4つ目『眩暈』は、混乱や一時的な知覚の破壊といったクラクラするような状態や失神に近い状態を楽しむ遊びです。
これだけ聞けば、少し怖いイメージがあるかも知れませんが、ブランコやシーソーといった遊具やバンジージャンプ、ジェットコースターなどがこの眩暈に分類されます。

競馬と遊びについてのイメージ画像2

なお、すべての遊びがこの4つのいずれかに分類されるわけではありません。

たとえば、双六という遊びは、サイコロによる偶然の要素もあり、一方では早くゴールする競争の要素もあるといえます。
2つ以上のカテゴリーに属する遊びの場合もあるということですね。
このようにいろいろな遊びを考えていくとその多くが、この4つに分類されることが分かります。

遊戯論を競馬に当てはめて考察


ここからは、競馬がどのカテゴリーに当てはまるのかを考えて、その魅力を探ってみたいと思います。

まず最初に思い当たるのが『競争』ではないでしょうか。
これは、自分自身が競争するわけではありませんが、競馬はその名の通り、馬が競うのを見て楽しむ娯楽です。

馬齢別や芝・ダート別、さらには距離別にレース体系が組まれ、その集大成として行われる頂上決戦のG1レース、ライバル同士の名勝負あり、超絶タイムのスピードレースもあり、ぶっちぎりの大逃げや全頭まとめて抜き去る追い込みありと馬券抜きの純粋なレース観戦だけでも興奮と感動を味わうことができます。

次に競馬はギャンブルですから当然『偶然』の要素も持ち合わせています。
これは、どんなに予想してもレース当日の天候や馬場状態、馬の体調や気分、スタートの良し悪し、位置取りやペース配分など、何か1つ変化するだけでも結果は大きく左右されます。
さらに馬の能力や実績だけで勝負が決まるわけではありませんので、我々の思惑が全く及ばないことも多々あります。
まさに運に身を委ねる遊びです。
しかし、それがまた競馬の魅力の1つなのかもしれません。

そして、3つ目の『模擬』はどうでしょうか。
これは、競走馬を演じるわけでもありませんし、被り物をして馬のモノマネをするわけでもなく、何かになりきるといった要素は競馬にはありません。
ただ、競馬には一口馬主制度という模擬そのものの要素を持ったシステムが該当します。

個人で馬主になるには、所得と資産に関する高い要件をクリアする必要があり、一般の競馬ファンにはとてもハードルが高いものだと思われます。
しかし、この制度を利用すれば、クラブ法人が募集する馬の中から気に入った競走馬に出資することで馬主の疑似体験が可能となります。
そして、年間数万円程度から馬主気分を味わえるのですから、一般の競馬ファンでも手が届きやすい娯楽といえます。

また、さらにハードルが低いものとしてペーパーオーナーゲームという遊びもあります。
これも紙面上だけで仮想馬主になり、決められた頭数の競走馬を選択し、その馬の獲得賞金をポイントに置き換えて競い合うゲームですので、馬の購入代金や会費も不要です。
それこそ誰にでも参加できるゲームの1つです。

ペーパーオーナーゲームの代表として挙げられる1つは、netkeiba.comです。参加者は毎年6万人ほどといわれています。
また、JRA版での参加者も10万人以上いて、さらに仲間内などでやっている人も合わせると全国で何十万人もの人が楽しんでいると推測されます。
また、お気に入りの騎手などのファンになって応援することも『模擬』に分類されると思います。

そして、競馬には『眩暈』の要素も含まれていると思います。
たとえば、最後の直線で自分自身が応援している競走馬が伸びてくると大声で名前を連呼し、ゴール前でそれが絶叫になった経験はありませんか。
また、大金をかけて勝負し的中した時など、本当に手がブルブルと震えしばらく止まらなくなることもあると思います。
たった5秒か10秒の間なのに気が付けば、声がガラガラになるほど叫んで我を忘れることができる大人の眩暈も競馬の醍醐味といえそうです。

競馬と遊びについてのイメージ画像3

このように見てみると、競馬にはカイヨワが表した4つの分類に遊びの要素が全て含まれているのではないかと考察しました。

最近のオンラインゲームやテーマパークなどのアトラクションの中には、この4つの遊びの要素を全て取り入れてデザインしているものもあると聞きますが、それ以外の遊びで競争・偶然・ 模擬・目眩と全部含まれている娯楽が他にあるでしょうか。
いろいろな娯楽で検証してみましたが、どうしても見つけることができませんでした。特に他のギャンブルには模擬が見当たりません。

その点、競馬は4つすべてに該当しますので、これこそが競馬の魅力につながっているのではないかと思います。

まとめ


今回は、競馬の魅力について個人的な観点となりましたが、ご紹介させていただきました。

なぜ、競馬は人気があるのかとの結論は、カイヨワが表した4つの遊びすべてが該当するからです。
もっと分かりやすくいえば、昨今大人気の「人工現実感」や「仮想現実」と訳されるバーチャルリアリティーは、この4つ全ての要素を持っていると考えられますので、流行りになり得るのは必然だといえます。
だからこそ長い歴史を持つ競馬も流行り続けているのでしょう。

このように競馬は、様々な遊びの側面を持つ多様性から多くの競馬ファンを生み、ギャンブル性だけではない『遊び』として人気があるのではないでしょうか。